ハカセのKemperライフ

Kemperにハマったギタリスト・Rec/Mixエンジニア ハカセによる備忘録的ブログ。DTMなどの機材ネタ多めです。

Kemperの音を5150実機と比較してみた

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最近になって、Transientの今後のツアー時に使えるアンプ機材を調達したいな・・・と考えるように。

当初は、Peripheryとか今剛とか国内外ジャンル問わずみんな使ってる Fractal Audio SystemsのAxe-FxII XL+かなと安直に考えてました。。

相当ネットで調べてみたけど、ツアーに持って行くには辛い・・・かといって、一番便利そうなフロアタイプのAX8は音切れが若干ありそうなのとアンプタイプが1個しか使えない様子ってのでアウト。

そんなこんなで悩んでたら、友人からKemperはどうなのよ?と。

そういやあったな。。。で、試しに調べてみると、なんと去年対バンしたUNEARTHのKenがプロファイリングしている動画があった!ww

つーか、他の動画も見てると、UNEARTHはギター2人とも使ってるのね。全然わからんかった。。沖縄でのライブ時にもモデリングアンプらしきものは使ってる様子だったが、それはAxe-Fxのほうだと思ってたんだが・・・Kemperだったのかよw

そこから気になりだして一気にレビューとか見ていくとドハマリし、試奏したくなったという・・・。

正直、Axe-Fxよりも現実的なお値段な(日本円で10~15万くらい値段差ある)ので、検討余地もあるかなと。

そこで、とある筋からKemperをお借りすることができたので、ラボにて音作りをやってみた。

 

 

First inpression

 

初めの音出しはどの音もそのアンプの「らしさ」が強く出ていて好印象。

ラボでスタジオレベルの爆音はさすがに無理だったので、手持ちの5150実機をいつものセッティングにして、Kochのアッテネーターで出力1%まで落とし、Kemperのプリセット版5150と比較してみた。

ちなみに、Kemper側は5150のリターンに接続。キャビシミュはオフ。

お借りしたのはパワーアンプ付きだったが、電源はOFFに。

Outputの設定は色々あったが、まずはあまり弄らずに・・・。

 

ぱっと聞いた感じ・・・・ほぼ同じでビビった。

こんなに近い音出るのかよw

衝撃だった。

 

もう少し追い込んでみよう、と試行錯誤していくと、全く同じ音にはならなかった。

その中で感じたこと・分かったことは以下。

 

  • Kemperは実機のような音の奥行き・立体感が無い(モニターで聴く平面的な音)
  • 音自体にコンプ感が強くかかる
  • 特に歪んだ音色について、実機だとコシのある音(音の芯)の周囲に歪み成分が付加されるような音像だが、Kemperだとその音の芯自体が歪んでいるように聞こえる

 

まあ、全く同じにならないとは思ったが、こういう部分で違うのね・・・とちょっとガックシ。

でも、用途を考えれば、ヘッドアンプのリターン経由でキャビシミュオフにしただけでこのくらいの音が出るならいいかなと。

ライブではメインアウトからPAへ送る訳だし、その音が良ければ大きな問題も無い。

まあ、中音の気持ちよさは変わるだろうが・・・。

でも、なかなか出音に納得できなくて、とうとうプリセットではなく実際に実機をプロファイリングしてみた。

それもバージョン3以降で可能なダイレクト・プロファイリングを試してみた。

 

ダイレクト・プロファイリングの効果はかなりアリ!

 

本来はマイクを経由して、あの基地外な音波をKemperに送り、測定するのだが、ダイレクト・プロファイリングはキャビネットを介さずに測定可能な方法。

でも、自分の場合は純粋にライブでも使えるようにしたくて、パワーアンプも経由させない形(=プリアンプ部分のみ)のプロファイリングを試してみた。

ヘッドアンプのセンドから送る形でも可能なのだが、5150にはプリアンプアウトがあったので、アッテネーターで1%に落としたまま普通にキャビ接続し、プロファイリングしてみたがうまくいった。

 

その音で再度実機と比較すると・・・さっきよりもかなり音が近づいた!

やっぱりパワーアンプ~キャビ~マイクを経由する音の影響はあるのかも。

とはいえ、実用レベルで音出してみないことには評価は厳しいので、後日ドラムのケンタa.k.a.ケンパーとスタジオ入りしてみた。

 

大事なのはinputの Clean SensとDistortion Sens

 

早速アンプにつなぎ、いつもの音量まで上げると・・・まさかのハウリングの嵐!

そこは実機に近づけようとして追い込んでいたアンプEQのハイとプレゼンスを下げて対処。

でもまだ音がキツイ・・・そしてハウる。

そこで今まで触れていなかった設定に気づく。

 

そう、inputの設定である。

ギター入力の設定でClean SensDistortion Sensという項目があるが、手持ちの7弦の入力がデカイらしく、既に歪んでいたようだ。

outputが赤く点灯するので、そうならないようClean SensとDistortion Sensを上げ下げして調整すると、大分落ち着いた。ノイズゲートも少し落としても大丈夫なくらいになった。

 

バンドで合わせると印象が激変・・・これは・・・使える!

 

そして改めてドラムと音合わせ。

やっぱり実機と同じ音にはならなかった。

が、悪いという意味ではない。

むしろ、以前よりもDjent的なクッキリハッキリパキパキ極悪なサウンドになったwwww

実機と比べて、どうしても立体感は薄れてしまうが、メタルコアやデスコアには合う音になったと思う。

 もっといえば、正にレコーディング〜ミックスを経て出来上がったあの音源まんまの鋭く重い音が出てくる。

それを求めて音作りしていたのなら、ある意味答えなのかな、と思う。

それくらいの音質である。

 

それと、音のコンプ感については、良い意味ではっきりすっきりした音になったとも言える。

別バンドではコンパクト・エフェクターでボード組んでいるが、バッファ兼クリーンブースターとしてRC Boosterをかましている。それに若干近いニュアンスで、音をはっきりと聴かせることができる(もしくは、はっきり聴こえてしまうともいう・・・)。

ここは好みや使い方によるだろうけど、バンドの周りの音に滲んでマスキングされること前提の音作りだと、逆に扱いづらいのかな、とも思った。

 

それと、音が早い。

真空管じゃないから、音の立ち上がり早いんだろうな。にしても早い。

弾きづらい訳ではないが、真空管アンプに慣れている分、ちょっと演奏の仕方を少し変えないといけなくなるかも・・・と思った。

 

エフェクトのノリがとても良い

 

ちなみに、内蔵されているエフェクターもかなりの数があり、アンプセクションの前に4つ、後ろに4つ配置できる。うち後ろ2つはディレイとリバーブが固定されているが、自分の用途としては同じ配置で使っていたので問題は無し。

ドラムと曲を合わせて、ソロパートでディレイ・リバーブを掛けたんだが、 めちゃくちゃハッキリしてて抜ける。てか、抜けすぎる・・・w

これは予想外の結果。アンプ実機とコンパクトのディレイとの環境差もデカイが、これはすごい。

ちなみにディレイはMixレベルで調整できるし、クッキリハッキリしてて音像もキレイ。割と好み。リバーブもうるさくない存在感で使いやすい。

Axe-Fxはもっと良いらしいが、ライブ用途でならこれで十分。

他のエフェクトも割と良さそうだった。

ノイズゲートの効きが気になったが、それも大丈夫そう。

 

ついでにノイズゲートについても書いておこう。ノイズゲートはギターinput、そしてアンプ前後にも掛けられる。
特にハイゲイン系ではアンプ後に掛けることで効果が得られるが、ほんの少し…音の伸びが無いように思えた。しょうがないけどね。
かといって、すぐに音がゲートされるわけでも無いから、使えなくは無い。
これも使い方次第かな。

 

自分の場合、当初からTransientのツアー用途だから、そこまで細かいアサインや多くの音色を必要としてはいない。

でもやろうと思えばボードで組んでいるセッティングも半分以上賄うことはできそう。

 

あ、そういえば音切れ。

これは大丈夫だったw

うちに転がってたBOSS GFC-50でパッチ切替したけど、音切れというほどのものではなかった。

あくまでアンプ+ディレイとか、少ないプリセットでの話だから、7~8個とか一気に音色切り替えると、もしかしたらまずいのかもしれない。

とりあえず、現状はライブで問題になることはないだろうと判断。

 

個人的にKemperは購入したいと思った

 

あとはランチボックスのヘッドタイプか、ハーフラックタイプか。

ツアー時はコロコロにアンプとギターケースと荷物積んで歩くだろうし、持ち運びしやすいサイズとか今後の拡張性とか諸々検討して決めなきゃな。

 

それと、個人的にパワーアンプは無しでいいかな。

今回は5150とMarshallのヘッドにリターン挿しして音質差も比べたけど、結果からいうと補正できる許容範囲内だった。

あったら助かる場面もあるだろうけど、どうしても必要になったらiSPのSTEALTHあたり買えばいいし。そのほうが安いしw

 

まとめ

  • Kemperは生のアンプ「らしさ」をすごくリアルに捉えるいい音
  • プロファイリングは90%位の再現度はあるが、(特にキャビ出しは)全く同じ音にはならない
  • デスコアやDjent系ならバッチリな音が作れる
  • リグの作り込み次第でいい音になるし、自分でプロファイリングすることでどんどん追い込める楽しさがある(個人的にプリアンプのみダイレクトプロファイリングはリアルアンプの完成度高まったのでオススメ)
  • ツアーでもレコーディングでも使える。KemperとMIDIフットコントローラーだけのオールインワン。しかも機内手荷物可能な可搬性は他に無いメリット。
  • 個人的にパワーアンプは要らない。ヘッドアンプにリターン接続で。必要になったら別途購入(iSP STEALTH)

 

長くなったけどKemperの試奏レポでした。